11年ぶりのレジェンド復活。まず聴くならこの一枚

2014年、KICK THE CAN CREWがついに復活する。現在はソロで活躍しているKREVA、MCU、LITTLEの3人が1996年に結成したヒップホップ・グループで、3者3様の個性、抜群のラップ・スキル、そして親しみやすく共感できるメロディとリリックでもって、紅白出場を果たした「マルシェ」を始め、「クリスマス・イブRap」「アンバランス」など数々のヒット曲を生んだ。今でこそ、日本のヒップホップがポップでハッピーなのはごく普通だが、10年以上前にその流れを切り開き、ヒップホップの門戸開放に大きく貢献した一組でもある。 しかし、鼻息荒く「復活」といっても、まずは夏フェス「ROCK IN JAPAN FES」「MEET THE WORLD BEAT」への出演が決定しているのみだし、10年間の活動休止中も、3人が同じステージに立ったり、MCUとLITTLEが組んだユニット「UL」をKREVAがプロデュース、といったプチ復活はあった。それでもやっぱりキック名義での活動再開は、ちょっと胸に迫ってくるものがある。 KICK THE CAN CREWを復習するアルバム1枚を選ぶとしたら、ブレイク期の03年の『magic number』や、今のところのラストアルバム『GOOD MUSIC』になるのだろう。だが、個人的にはどうしても、02年のメジャーデビューアルバム『VITALIZER』なのである。結成のキッカケとなった曲のリミックス「カンケリ02」、代表曲「マルシェ」、大先輩ライムスターとのテンション高い共演「神輿ロッカーズ」など、彼らの原点から基盤が詰まっており、上り調子の熱気と野心と、にもかかわらずしょっちゅうナイーブモードに突入してしまうのが、まさに「THE男子」。当時は「イツナロウバ」の蒼いメロディが大好きだったが、10年以上経った今聴き返すと、無性に気になるのが「ONEWAY」。<もしお前の側にオレがいれば 一生涯いらねえぜナビゲーター>とうそぶくKREVAと、<オレがオレでいつづける ことが時にお前を傷つける>というLITTLEのセンシティブな一面が、1曲の中に同居しているのがたまらない。単なる楽しさやポップさだけでなく、男子3人のマイクが生み出す、「強気発、切なさ行き」のダイナミズムもまた、多くの人々を惹きつけた理由だったのかもしれない。